*世界のベンチマーク(自伝)ベトナム編(八)脱出劇

株主総会に向けて戦線恐々としているО氏は疑心暗鬼になってさかんにコンタクトをかけてきた。2人だけで話したいという電話が何度も何度もかかってくる。О氏とベトナム人社長ヒエンとの間にどのような関係があったかは知らないがここまで執拗だと彼の管理責任以上のリスクがあったのではないかと疑いたくなってくる。

一方的な情報提供と経営管理を行うK社に対する疑惑は他の株主会社にもあった。しかし自分の所属先であるM海運が戦う意思を持っていない限り、他の会社を焚きつける意味もない。かといって自分の意にそぐわない発言をする気もない。僕は会議への出席を拒否した。

これが更に恐怖心を煽ったらしく、電話が鳴りやまない。既に会社を辞める決意を固めていた僕は、全ての連絡を絶ち、居場所も特定されたくないのでホテルを予約した。

ところが恐るべし共産国、なんと予約されていたはずのホテルが当日キャンセルされているではないか。会社用とは別の携帯電話でベトナム人の知り合いに急遽別のホテルをアレンジしてもらった。ローカルで戦うにはローカルを味方につける。本能で学んだ経験知が教科書としてできつつあった。

О氏の心配は杞憂に終わったので、会議後は上機嫌だった。最近の僕の様子に元気がなかったそうで心配していたそうだ(笑)。数週間後、新しい会社の受け入れが整った時点で会社に辞表を手出した。