世界のベンチマーク(自伝)インド編(六)計画のとん挫とリーマンショック

トラブルはあったものの〇ニク〇の出荷は順調に流れ始めた・・・かに見えた。だが結局プロジェクトは長続きしなかった。決め手となった理由は定かではないが高い経済成長率を持つ一方でインドは国内産業の保護に力を入れており外資企業の参入へのハードルも高い。日本のファストファッションブランドのインド出店は当面見送る形になった。おりしも時は2009年。リーマンショックで世界中が大不況のあおりを受けており、それはインドも例外ではなかった。

 インドは膨大な貿易赤字を抱えており、輸入総額は輸出の約2倍に上る。国土的には世界第7位の大国でありながら自国をまかなえるだけのエネルギー資源を持たず純輸入に頼っている。WTOに加盟しているものの、実際の関税率はどのようなモノであれ最低でも10~12%徴収される。おまけに州をまたぐ物品の販売においては越州勢も取られる。つまり、仮に首都ニューデリーに輸入した物品をインド第2の都市ムンバイに販売するとなると更に10~15%ほどの税が上乗せされ、そもそも販売価格の約1/4も高くなってしまうのでインドで輸入品を展開するのは至難のワザだという事がわかる。

 一方で航空系の物流会社というのは輸出主義といって、輸出の取扱量で評価が決まる。確かに輸出が増えれば前項で説明した通り貨物の混載差益で利益確保がしやすいという面がある。僕自身はどのような形であれ現場の特徴に合わせてキャッシュが回るのが第一という考えだが、そこは日系の航空会社を親会社に持つプライドか「取扱量〇〇トン!」というのを言いたいが為の指示が入る。

 色んな国を見てきて今はっきり言える事は文化とはつまり感情だという事だ。みそ汁を恋しいと思う気持ちに論理的な理由はない。そして、感情は執着を生み、弱点となる。中国なら金、インドなら家族(一族)を抑えればゲームを優位に進められる。日本の場合はメンツ(世間体)だと思う。世間様から後ろ指指されないよう、あるいは(日本社会から見た)正しい姿勢を見せる為に論理性も、実効性も、採算も後回しにされる。

 話をもとに戻さなきゃ。インドの空輸における品目別の順位は1.貴金属 2.絨毯などの織物と続く。そして輸出貨物の大半の向け地は中東になる。こちらは少し想像がつく。アラブの金持ちが持つ家具や身に着けている宝石類などにインドからの物品が含まれているのだろう。一方で日本における僕らの日常生活の中でインドからの輸入品を目にする事はほぼない。見たことない。カレー屋ぐらい? 

そんな中、僕は自己の必要性の証明や将来のキャリア形成の為になんとしてもインド発日本向けの貨物を獲得する必要があった。半ば大きな成果をあきらめつつも、アイデアを駆使した残り駐在時間の保身ロードが始まった。