世界のベンチマーク(自伝)インド編(四)多様性の幅と限界

赴任にあたっての当面のプロジェクトは前述に記したとおり、〇ニク〇の物流網を構築する事。その初出荷は僕が住むニューデリーではなく、インドで最も近代化に成功しているといわれるインドのシリココンバレーと呼ばれるITタウン・バンガロールの近郊にある工場からであった。バンガロールにあるIIT(インディアンインスティテュートオブテクノロジー)はMIT(マサチューセッツ工科大学)のインド版と言われ。毎年優秀な人材を輩出し卒業生をわざわざGAFAがスカウトに来るほどだ。GoogleのCEOであるサンダー・ビチャイもインド人である。バンガロールは南インドに位置し北部のアーリア系とは違い黒人に姿が近いドラヴィダ人も多数いる。南インドの人々は科学技術に秀でている事で有名で核爆弾やロケットの開発にも成功している。

現場事務所に向かうとその人員構成に面白い構図が見られた。合弁先のパートナー会社はグローバルアビエーションというインドの国営系航空会社エアインディアの人員によって組織されている会社で、エアインディアの利用を前提とした旅行会社やクーリエ発送を本業としている。つまり北のアーリア系が支配している。バンガロールにおいてはアーリア系はマイノリティであるにも関わらず、管理支配はアーリア系、実務労働はドラヴィダ系が担っていた。同じ国であっても、出生や見た目が大きく人生の地図に影響する。それも彼らの概念では広義のカーストの一種なのだろうけど・・。とても合理的な考え方をするインド人でさえ、職能だけでは評価や運営ができない。人間に感情がある限り差別構造はなくならない事を示す模型のようだけど受け止めなければ前にも勧めない。

日本の物流システムや貿易書類に関しては素人の人員をトレーニングして流通に載せるための出張だったが、アーリア系の管理職は全く非協力的で「勝手にしろ」といういわんばかりの姿勢だったので、事務所にいた肩身のせまそうなおじさんを指名して仕事を開始した。余り重要な人材でなければアレルギーを起こさないであろうとの配慮からだ。そのおじさんはBabu(バブー)という名で見た目だけでなく、名前の音感もめっちゃ黒人っぽい。素直なんだけど、いつもきょとんとした目つきで文明に初めて触れた人のようだ。

さぁ~、ここからが腕の見せ所。お前たちがバカにしている人間に追い抜かれる感覚。とくとご堪能あれ。