(八) 番外編・インドで空手師範になった件

いつものちょびっと寄り道。これまで海外の各地で格闘技を通じて交流を図ってきたが、今回のインド駐在においてもご多分に漏れずやってきますたよ。なかなか世界各地で殴り合うってないよね(笑)。

 僕の赴任したグジャラート州はガンジーの出身地らしく、ベジタリアン・非暴力の文化性なのでなかなか格闘技のジムや道場などは見つからなかった。ネットで探しても道場名が「ブラックドラゴン」とか動画を見ても明らかに胡散臭いのばっかでとてもじゃないけど練習なんかできない。

 そんな時に街中の電柱に「KUDO」という貼り紙を見かけた。漢字では「空道」と書く。もともと極真空手のチャンピオンだった東孝(あずまたかし)先生が、全局面で対応できる空手を作るというコンセプトの元、スーパーセーフというヘルメットのような防具を付けて、顔面パンチ、投げ技、締め技、関節技、頭突きに至るまで認められた協議を作った。発足当初は「格闘空手」と呼ばれていて、マスコミにも取り上げられて話題になっていたが徐々にプロ路線から一般への普及に力をそそぎ、ロシアをはじめとした全世界に広がりを見せてオリンピック採用の試金石ともなるアジアンゲームスに採用されるまでに拡大した。この頃に空手との差別化を図る為に名称を「空道」に変えた。

 そしてなんと息子は日本で空道の道場に通っているのである。

僕は東先生の「社会体育としての空手」という考え方が好きで、海外のように日本で武道をやっている人間がもっと尊厳をもって扱われるように社会的活動をされている事に共感を持っていた。

 またベトナム駐在時代に散打という中国のカンフー系キックボクシング競技に参加する為ベトナムにやってきた空道の選手団とたまたまハノイの空港で面会して、その時食中毒を起こした選手に医者を手配した事で感謝され、一度お食事をご一緒させて頂いたご縁がある。

 そんな経緯もあって息子を空道の道場に預けたのだが(僕が直接教えるとガチすぎて心を折ってしまうと考えたので)、まさかここインドでも出会ってしまうなんて、素敵・・・♡
 
 遠く離れたインドと日本で親子で同じ武道をやるってのもオツだな~♬とワクワクして、連絡を取って道場を訪ねてみた。

 日本と違って寺院のような場所の土間で練習している。床は大理石のようなつるつるの石。めちゃくちゃ危ない。大人、子供あわせて80名くらいの生徒が一度に会している。日本でこの規模の通常練習はまず見られない。

だが、練習の様子を見てみるとどう考えても素人くさい・・・。芸人がコントでやるカンフー並みに怪しい。どーやって空道の看板を掲げているのだろうかと疑問に思い、がっかりして半ば睡眠状態で現場を眺めていると、師範と思しき人物が近寄ってきて「お前は空手の経験があるのか?」と聞いてきた。またいつもみたいに道場破りと間違われて面倒くさい事になるのかと憂鬱になりつつも 「ある」と答えると技を見せてみろと言う。しょうがいないのでチョ、チョッとシャドーをして、ミットに蹴り込んでみる。次の瞬間

「SENSEI!」

マジかお前ら(笑)。