*世界のベンチマーク(自伝) インド編  (一)インド=カオス

インドといえば皆さん何を思い浮かべるだろうか?カレー?タージマハール?踊りまくる映画?全部正解! だけど、一点違うポイントもある。大体、僕らが思い浮かべるような料理、例えば中華料理の北京ダックとかベトナムのフォーとかは毎日家庭で食されている訳ではない、外国人が思い浮かべる日本の寿司も同様に毎日家庭で食される訳ではないように現地の食生活は往々にして赴任前の想像とは違うものだ。しかし、インドはカレーを3食毎日食べる。赴任当時はなかなか家が決まらず2か月近くも事務所近くのローカルホテルで過ごしたのだが朝から食堂はカレーの匂い(汗)に満たされ、カレー以外の料理といえばサンドイッチだけ。当然、食欲は激減。さらに追い打ちをかけるように、猛烈な腹痛に下痢と高熱にうなされ最初から異世界の歓迎を受けた。

交通機関もないので移動はもっぱらオートリキシャーと呼ばれる3輪車タクシーを使うが、ある日どうしてもカレー以外のものが食べたくなって、これを使い、できたばかりのショッピングモールに出かけたが、なぜかすんなりホテルに帰ってくれない。しかも最初に交渉した金額の倍近い料金をふっかけてくる。海外での揉め事には慣れているので別段驚きはしないが、運悪く大きな金額の紙幣しか持ち合わせていなかった。案の定おつりが来ない。取り返そうと運転手がシャツの胸ポケットに入れた500ルピー札に手を伸ばすと手首を掴まれた。反射的に空いている方の手で彼の喉元を押さえつける。途端に周りのドライバーたちが取り囲むようにして集まってきた。もうどうにでもなれと僕を騙そうとした奴だけはやっつけてやろうと構えを取り始めた時、観衆の中から有志のインド人が出てきて僕ともめたドライバーに注意を促し、場を収めてくれた。彼が本当に良い人だったのか、仕込みだったのか未だに不明だが、とにかく赴任当初の僕は煩わしいトラブルに見舞われて久しぶりの高揚感と家族がやって来る事への心配という相反する感情を同時に味わっていた。

家族をケアしつつ、この冒険を乗り切れるか?クルーはお嬢さん育ちの妻と2歳の息子。一人ではない、という事実が前途多難な未来を既に啓示していた。